2016年7月29日金曜日

フェルナンド・イワサキ 『ペルーの異端審問』本日発売

中世南米ペルー副王領の首都リマで、異端審問沙汰となった性にまつわる数々の珍事件を、17の短編に再構成した異色の作品集です。


内容紹介

本書は、ノーベル賞作家マリオ・バルガス・リョサが高く評価する日系ペルー人作家、フェルナンド・イワサキの本邦初訳作品です。中世南米ペルー副王領の首都リマで、異端審問沙汰となった性にまつわる数々の珍事件を、一七の短編に再構成した異色の作品集です。
異端審問といえば、一般には拷問・迫害・蒙昧主義のイメージが色濃く、芸術性やユーモアと結びつけた作品はほとんど見当たりません。しかし著者は、人間性に 対する鋭い洞察とみごとな筆致で、凄惨な歴史を極上の文学作品に精錬しました。好色な聴罪司祭、悪魔に憑かれた修道女、男色司教に淫らな女性信者たち……?の ような本当の話を裁判記録から精選し、軽妙な読み物に仕立て、読者を抱腹絶倒させることに成功しています。罪を逃れようと屁理屈を並べる被告人、困惑した異 端審問官たちが下す牽強付会の判決、書記が性的要素を隠そうとするあまり、かえってその淫靡さが際立たってしまった調書の文言……読みながら思わず笑いが 漏れるとともに、一抹の物悲しさがよぎります。被告の多くは結局重い罰を科され、不遇のうちに人生を終えるからです。果たして彼ら彼女らの罪は?神なのか、それ とも人として自然な肉欲を隠さなかったことで俗世の権威と秩序を侵したことなのか。諧謔に満ちた物語が、いまなお温存されるカトリック社会の欺瞞を鋭く照らし出します。
バルガス・ジョサは、本書に寄せた「序文」で次のように述べています。「本書の魅力溢れる(ときに残酷な)物語は、リマ社会の裏に息づく官能と肉欲の炎を示してくれる。その炎は偏見や禁忌、迫害に抑えつけられたがために、かえって燦然と燃えあがったとも言えよう」。
著者フェルナンド・イワサキは、二〇一五年にスペイン王室も主催に名を連ねるドン・キホーテ・ジャーナリズム賞を受賞したこともあって、近年世界的に評価 が高まりつつある作家です。またこれまでに数回来日、作家逢坂剛氏との対談や東京大学での講演を行っています。ラテンアメリカ文学の次なる名手をお探しの読書家に、 自信をもってお薦めします。
序文:マリオ・バルガス・リョサ
★巻頭推薦文:筒井康隆

著者について

Fernando IWASAKI 1961年6月5日、ペルー・リマ生まれの作家(但し、国籍はペルーとスペインの二重国籍)・歴史家・評論家。小説・歴史書など著書多数。1989年よりスペイン・セビリアに在住(前記のようにスペイン国籍も取得)。『エル・パイス』紙をはじめ スペイン語圏の有力紙に寄稿。1987年アルベルト・ウジョア・エッセイ賞、2015年ドン・キホーテ・ジャーナリズム賞(Premio Don Quijote de Periodismo)。              



Fernando IWASAKI
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