2016年10月17日月曜日

セルバンテス絶賛の『ティラン・ロ・ブラン』の邦訳文庫本明日発売

J・マルトゥレイ、M・J・ダ・ガルバ 『ティラン・ロ・ブラン
騎士ティラン・ロ・ブランの地中海を巡る冒険と、絶世の美姫との愛の日々が、絢爛豪華な宮廷生活を背景に生き生きと描かれています。ドン・キホーテが読みふけり、正気を失う原因となったスペイン15世紀の騎士道小説です。『ドン・キホーテ』『アーサー王物語』『デカメロン』などと同列と評される、世界文学の傑作で.原書は1490年刊。 


『ティラン・ロ・ブラン』はジュアノット・マルトゥレイ(l413?-68?)が書き始め、ジュアン・ダ・ガルバ(?-1490)が完成させたという、カタルーニャ語の騎士道小説です。作中、騎士の日常的な行動(眠ったり、食事をしたりすること)が写実的筆致で描かれていたり、官能的描写や調刺感覚も垣間見られたりして、従来の騎士道物語とはやや趣を異にすることから、このジャンルの小説にはふさわしくないとの声も聞かれますが、セルパンテスは『ドン・キホーテ』 (前編、第6章)で、以下の通り、これを最高の傑作とみなし絶讃しています。

・・・あんまり抱えこみ過ぎたので、中の一冊が 床屋の足もとへ転がり落ちた。なんだろうかと覗く気になって目をやると、なんとこれが『名にし負う騎士ティランテ・エル・ブランコ物語』というのであった。
「これはまた何としたことか!」司祭が大きな声を張り上げた。「こんなところに『ティランテ・エル・ブラン コ』があろうとは夢にも思いませんでしたな。ちょっと貸してみて下さいよ、ニコラス親方。この本と来たらまるで歓喜の宝庫、ひまっつぶしの鉱脈みたいなものでしてな。この中ですよ、ドン・キリエレイソンやその弟トマス・デ・モンタルバンや、騎士フォンセーカが出て来たり、それから豪勇ティランテが猛犬相手に戦ったり、腰元プラセールデミビーダの目はしの利いたとりなしや、未亡人レポサーダの色仕掛の手管があったり、おつきの従士イポーリトに思いを寄せる皇后様が現われたり。正直のところ、ニコラス親方さん、文章の点から見ても、 この本は世界第一です。少なくもこの本に出て来る騎士たちは、食事もすれば、眠りもする、ベッドの中で死にもすれば、死ぬ前にはちゃんと遺言も書いて置くと行ったた具合で、他にも色々なことをするが、これは他の同種の本の中では絶対に見られない事ですよ。それはそれとして、この本の作者は余生を徒刑船(ガーリーせん)に封じこめられるだけの価値(ねうち)はあったというものでしょうな、何しろこうした馬鹿げたことをわざと書き立てたのであって見ればね。論より証拠、持って帰って読んでごらんなさい、わしの言葉の正しいことがお分りになりましょうから。」
「よろこんでそうして見ましょう。」床屋が答えた。・・・(堀口大学訳)

主人公であるブルターニュの騎士ティランは、イングランドで馬上槍試合に参加しながら、他国での遍歴の旅を続けます。また、ロードス島防衛をめぐってオスマン・トルコと戦ったり、その一方ではさまざまな恋愛沙汰に巻き込まれたりと、多難な人生を歩むのですが、最後はビザンティン帝国の皇帝の娘と結婚するまえに病に倒れ命を落としてしまいます。いわゆる中世の騎士道物語にみられる一種の冒険譚ではありますが、それ以上に写実的手法によって当時の社会の様子が生き生きと描写されている点は注目に値します。

Tirante el Blanco (Tirant lo Blanch en su título original en valenciano) es una novela caballeresca (expresión de Martín de Riquer) del escritor valenciano Joanot Martorell y que se suponía concluida por Martí Joan de Galba —idea que aún hoy no se descarta—, publicada en Valencia en 1490, en pleno Siglo de Oro valenciano.
Es uno de los libros más importantes de la literatura universal y obra cumbre de la literatura en valenciano.



ドン・キホーテは文学の基本(明日はセルバンテス没後400年)