2018年8月24日金曜日

今年出版されたスペイン文学など


1. 全世界で2億部突破のベストセラー作家、ダン・ブラウンの最高傑作『オリジン』===
スペインのビルバオ、マドリード、セビリア、バルセロナを舞台に、ラングドンの前に最強の敵が立ちはだかります! 鍵を握るのは、人類最大の疑問「我々はどこから来たのか、どこへ行くのか」――。

2. 『島の「重さ」をめぐって―キューバの文学を読む』=== キューバをめぐる二つの詩学―キューバは世界史上の磁場であり、特別な存在である、ゆえにこの島は「重い」。―キューバは曖昧で不明瞭な存在だ、言わばこの島には「重さがない」。自らのアイデンティティを自明視する「肯定の詩学」と、それを疑う「否定の詩学」。相反する二つの詩学を両輪に走り続けてきたキューバの文学を複眼的な視線で追います。

3. バルガス・ジョサ『マイタの物語 』===1958年、ペルー山間部でごく小規模な反乱がありました。首謀者はトロツキー派の組合運動家、名前はマイタ。その20年後、とある作家はこの事件を小説で再現しようと、事件の証言者たちを辿ってインタビューを試みます。しかし、証言者たちの語りは食い違い、反乱の全貌は窺えないまま最後の証言者マイタの居場所を突き止めることになります……。史実とフィクションを意図的に交錯させる大胆な手法を試みた、ノーベル賞作家によるメタ・フィクションです。

4. 『日本人の恋びと』===アメリカ合州国の老人ホームを舞台に、生涯の愛について、人生の秘密についてのイサベル・アジェンデの新作です。毎週届くクチナシの花、黄色い封筒に入った手紙、お忍びの小旅行…80代を迎えた老人の謎めいた日常の背後に、いったい何があるのでしょうか? 高齢者向け養護施設に暮らすアルマ。日系人イチメイとの悲恋を主軸に過去と現代のドラマが展開していきます。

5. 『ラテンアメリカ傑作短編集〈続〉: 中南米スペイン語圏の語り』===多彩な情景、多様な手法。深まる内省、増しゆく滋味…幻想と現実のあわいで揺れる多彩な作品群。10カ国にまたがる作家たちが紡ぐ、16のきらめき。日本初紹介作家を含む、短編アンソロジーです。

6. コルタサル『奪われた家/天国の扉 』===古い大きな家にひっそりと住む兄妹をある日何者かが襲い、二人の生活が侵食されていく「奪われた家」。盛り場のキャバレーで、死んだ恋人の幻を追う「天国の扉」。ボルヘスと並びアルゼンチン幻想文学を代表する作家コルタサルの「真の処女作」である『動物寓話集』、表題作を含む全8篇を収録しています。

7. ホルヘ・フランコ『外の世界』===“城”と呼ばれる自宅の近くで誘拐された大富豪ドン・ディエゴ。身代金を奪うために奔走する犯人グループのリーダー、エル・モノ。彼はかつて、“外の世界”から隔離されたドン・ディエゴの可憐な一人娘イソルダに想いを寄せていました。そして若き日のドン・ディエゴと、やがてその妻となるディータとのベルリンでの恋。いくつもの時間軸の物語を巧みに輻輳させ、プリズムのように描き出す、コロンビアの名手による傑作長篇小説!アルファグアラ賞受賞作です。
「俺は堕落する前に、あんたみたくイソルダを抱き締めて、俺のイソルダ、と呼んでみたかった。俺が欲しかったのはあんたの金じゃないんだよ、ドクトール。あんたの娘を欲しかったんだ。城の近所に住む金持ちのぼんぼんが日がな一日、城の周りをうろついているのと同じように、俺もイソルダの行動を遠くから窺っていたんだ」(中略)
 今度こそ、エル・モノは腹から笑った。俺にしたって同じだよ。あの娘を思い出すと、ときどき自分でも知らないうちになんでもないのに笑っているんだ。悪ふざけかなにかを思い出したんじゃないか、って訊かれるけど、あんたと同じだよ、ドクトール、あの娘のせいだ。俺たちのイソルダを思うと、笑いがこぼれてしまうんだ。あんたは、俺たちのって言うと怒るけどな。...

8. 『チェ・ゲバラの影の下で 』===チェ・ゲバラの孫・カネック、 権力悪を批判してアナキストに

覆いかぶさる祖父の〈名声〉の重圧、親に同伴しての 幼児期からの世界放浪、革命キューバの混沌などに翻弄されつつも、次第に形成されゆく「詩と反逆の魂」。40歳で急逝した著者の文学的遺稿集です。

チェ・ゲバラの長女、イルディータは語っていた。「キューバ革命は救い出されうるはずです。でも、どうやって、ということが私にはわからない。私にとって、夢は死んではいない。それは、今は、休眠状態か凍結状態かもしれない。共産主義は、 時勢に遅れずについていくことには失敗した。私が望むのは、人間の貌をした共産主義体制なのです」(本書「栞」より)息子カネックが本書で指し示している展望は、無数の〈イルディータ〉が抱いているに違いない夢を叶える道に繋がるだろうか。

チェ・ゲバラの長女イルダ(イルディータ)を母とし、ハイジャック機でキューバに亡命したメキシコ人アルベルト・サンチェスを父として、キューバに生まれ、幼児期から12歳ころまで親の都合でヨーロッパ各国、キューバ、メキシコなどに暮らしてのち、ハバナに定住しました。「チェ・ゲバラの孫」という外在的な視線に苦しみました。母の死の翌年1996年にキューバを出国、メキシコのオアハカに住み、編集・執筆、音楽、文化プロデュースなどの仕事を続けました。文学的創作、旅行記などを著したほか、主としてインタビューで、祖父チェ・ゲバラへの思いやフィデル・カストロ体制への批判を語りました。政治的には、アナキズムの立場に依拠して、権力的な左翼政治の在り方を厳しく批判しました。祖父より一年長く生きて、享年40。メキシコで病死しました。

9. 『フェデリコ・ガルシア・ロルカ 子どもの心をもった詩人』===巻き貝ひとつもらっちゃった。
中で 君に歌ってくれるよ
すてきなこと いっぱい。
僕の心は
水でいっぱい
(ガルシア・ロルカ「巻き貝」より。訳・平井うらら)

世界遺産アルハンブラ宮殿のあるグラナダは、イスラム教徒、キリスト教徒、ユダヤ教徒、ヒターノと呼ばれるロマといった多宗教・多文化の花咲く美しい街。
詩集『ジプシー歌集』、戯曲『血の婚礼』などで知られる、スペインを代表する詩人ガルシア・ロルカの故郷。
すべての人に教育と自由・平等を、と世界一民主的な憲法を掲げたスペイン第二共和制。スペインが理想にあふれていた時代。
ロルカは、その詩、お芝居、得意の音楽などの芸術の力で、貧しい人、女性、ロマ、ちいさな存在によりそい勇気づけ、ゆたかなイメージをうたいあげました。
彼の美しくも、楽しく、ゆたかな詩の源泉はどこに?
ロルカ研究の第一人者のイアン・ギブソンと、絵本の原画で世界で高く評価されているハビエル・サバラが、ロルカの生涯を美しい絵本につくり上げました。
日本版には、スペイン語原文を併記。また、著者のイアン・ギブソン氏によるオリジナル・メッセージ「日本の子どもたちへ」を収録(スペイン語原文も併載)。
さらに、「ロルカミニ事典」(写真多数)を付し、ロルカ入門としても、またスペイン語学習のための読み物としても好適です。
訳者の平井うららさんによれば、「ロルカの詩は、読まれるものではなく、歌われるもの」。
ぜひスペイン語の音の響きをも楽しみながら、ロルカがその詩にこめた心に思いを寄せてください。
【小学5年以上の学習漢字にルビをふっています。】

【もくじ】
 1. 絵本「フェデリコ・ガルシア・ロルカ 子どもの心をもった詩人」(スペイン語原文併記)
 2. イアン・ギブソン「日本の子どもたちへ」(スペイン語原文併載)
 3. ロルカミニ事典
 4. 訳者あとがき

スペインの国民的詩人フェデリコ・ガルシア・ロルカを子どもたちに紹介するためにスペインで制作された絵本の翻訳版。印象深く美しいイラストとともにロルカの生涯を辿ります。
「ロルカってだれ?」という日本の子どもたちのために「ロルカミニ事典」を収録。著者イアン・ギブソン氏のメッセージ「日本の子どもたちへ」などを付け加えた特別版です。
日本の子どもたちに向けてロルカを紹介する初の絵本。ロルカ入門としても、またスペイン語対訳なので、スペイン語学習にも好適です。

10. フアン・ホセ・アレオラ『共謀綺談 』===お話の万華鏡を覗いてみれば…著者と読者の「共謀」。代表作「転轍手」「驚異的なミリグラム」をはじめ、28の掌篇・短篇を収めた作品集です。
著者ホセ・アレオラ,フアン(1918‐2001)はメキシコ革命後の混乱期にあるハリスコ州、サポトランに生まれました。1926年に勃発したクリステロの反乱の影響で学校に通うことができなくなり、働きに出ます。様々な職を経験しながら、文学や演劇への関心を強め、フアン・ルルフォらと親交を結び、雑誌を発行し、短編を発表するなどしていました。1945年、奨学金を得てパリに留学、演劇を学び、俳優も務めるものの、翌年帰国。出版社FCEにて校正者として働き、さらに編集や翻訳の経験を積みます。1949年に短篇集『さまざまな作り話』を発表しました。自らが関わった文芸誌や叢書企画などで後進の作家たちに執筆の舞台を提供し、フエンテスやポニアトウスカ、パチェーコら次世代の作家を数多く育てました。

11. ソル・フアナ『抒情詩集 』===愚かな男性の皆さま あなた方は/女性のことをよく非難できますね
断罪していることの原因はまさに/自分たちだという自覚もないまま
(「風刺詩・滑稽詩」の「レドンディリャ」より)

17世紀後半、スペイン植民地時代のメキシコ。天賦の詩才に恵まれたソル・フアナは、主体的な生き方を貫くために、あえて修道女となりました。 男性優位の価値観が支配する社会にあって、教会権力からの抑圧にもさらされながら、 女性の自立を求めてなされた文学的達成の精華です。

12. 『スペイン学〈第20号〉



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良質なスペイン文学がもっともっと出版されると良いですね。

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Pd. 最近(6月)、スペイン内戦に関する以下のような分厚い本が出版されました。