2017年3月31日金曜日

José Cadalso カダルソ 『モロッコ人の手紙/鬱夜』本日発売 Cartas marruecas / Noches lúgubres



ホセ・デ・カダルソ 『モロッコ人の手紙/鬱夜』
〈ロス クラシコス〉 ゴヤ同時代のスペインの作家ホセ・イ・カダルソ・イ・バスケス。客観的で公平な批評によって普遍を追求する 『モロッコ人の手紙』、暗い夜の闇のなかで人間存在の悲惨を炸裂せる 『鬱夜』。理性の光ゆえにその影をも見出した彼の作品は、
(ゴヤのロス・カプリチョス43番)「理性の眠りが怪物を生み出す」 時代のヨーロッパに屹立します。異国人による書簡の形式に仮託した研ぎ澄まされた批評精神。新しい芸術思潮の始まりを告げるみずみずしい戯曲。世界が激動する世紀末を目前に控えた時代の息吹を如実に示す、18世紀スペインを代表する文学的達成、現代企画室より 本日、3月31日 待望の邦訳発売です。


著者について

スペイン・カディス生まれ。ボルテールらが輩出した当時ヨーロッパ最高の教育機関であったパリのルイ・ル・グラン校などに学びました。帰国後は軍務に身を投じるとともに、マドリード社交界の寵児となりました。数多くの文学者と交友を結び、詩、演劇、小説など多岐にわたるジャンルで作品を 残しました。『モロッコ人の手紙』、『鬱夜』はそれぞれ同時代の批評精神とロマン主義的感性を体現する作品として評価が高いものです。その他の作品に、小説『菫薫る賢人』、詩集『わが青春の手すさび』、 悲劇『ソラーヤ、あるいはチェルケス人たち』と『ドン・サンチョ・ガルシア』などがあります。ジブラルタル包囲戦に従軍、手榴弾の破片を頭部に受けて戦死しました。



José Cadalso

José Cadalso y Vázquez de Andrade, que usó el pseudónimo literario de Dalmiro (Cádiz, 8 de octubre de 1741 – San Roque, 27 de febrero de 1782), fue un militar español, muerto prematuramente en combate, y un valioso literato, recordado por sus obras Los eruditos a la violeta, Noches lúgubres y Cartas marruecas.
Se orientó hacia la carrera militar, llegando a obtener con el tiempo el grado de coronel. Siguiendo sus diversos destinos, residió en varias ciudades españolas, sobre todo en Madrid, donde entró en contacto con los círculos literarios del momento. Inició su producción literaria con una serie de dramas de corte neoclásico, como Sancho García (1771), algunos de los cuales fueron prohibidos por la censura, a los que siguió una sátira contra la pedantería de ciertas clases sociales, Los eruditos a la violeta (1772), con la que obtuvo su primer éxito literario. Siguiendo en la misma actitud crítica, próxima al espíritu de la Ilustración, escribió su obra más famosa, las Cartas marruecas (1789), inspirada en las Cartas persas de Montesquieu. En ellas, la España de su época es presentada en sus contradicciones y ambigüedades a través de la mirada exterior de un viajero de origen marroquí.

ホセ・カダルソ・イ・パスケスは、1741年10月8日にアンダルシアはカディスで新大陸との貿易で裕福だった下級貴族の家に生まれ、地元にあるイエズス会経営の学校で教育を受けました。その後パリとマドリードで学業を修めると、1762 年には軍人になることを決意し、ブルボン連隊に入隊しました。1766年にはサンティアゴ騎士修道会の一員として認められたものの、1768年にはきらびやかな宮廷生活に見られる阿訣追従や偽善を調刺したかどでアラゴンに追放されいしまいました。やがて文筆活動にも専心するようになり、文武二道を同時に歩むこととなりました。首都マドリードに滞在していた1770年にはマリア・イダルゴ一座の人気女優であったマリア・イグナシア・イバーニェスに恋をする一方で、中世叙事詩 に題材を借りた新古典主義の悲劇「ドン・サンチョ・ガルシア」を舞台に掛けたものの失敗に終わりました。1771年にマリアが他界するとカダルソは失意の底に沈みます。今回の邦訳の一つ、ロマン主義の先駆けともいえる「鬱夜」 (1798)はこの頃に書かれ た作品です。それでも翌年にはサン・セバスティアン荘の集いに顔を出すようになり、サラマンカへの移動を命じられたときには、当地の若い詩 人たちとも親交を得ていす。しかし、イギリス軍に対するジブラルタル包囲作戦に加わった際、敵の手摺弾にあたり命を落としました。享年41でした。
 カダルソは生涯のほとんどを軍隊に捧げたにもかかわらず、思うように昇進できなかったこととか、恋人の死による精神的痛手、さらに軍隊生活の虚しさなど、諸般の事情から1774年頃から徐々に社交を避けるようになりました。おそらくそうしたことの影響もあってか、カダルソの著作にはロマン主義 の予感が漂っています。主要作品には、知識をひけらかす鼻持ちならない浅学非才の連中を調刺した「えせ才人たち」(1772)、モンテスキューの「ペルシャ人の手紙」を真似て書かれた諷刺的散文で今回の邦訳の中心たる「モロッコ人の手紙」(1793)などがあります。

「モロッコ人の手紙』

この作品は死後出版です。政治家たちによる権力の乱用、紳士淑女にみられる過度の社交性、外国風の訳の分からない言葉使い、貴族の地に堕ちた教育など、18世紀のスペイン社会のいろいろな側面が軽妙酒脱な筆致で諷刺されています。作品の構成は書簡形式で、表向きはイスラム教徒の視点から西洋社会の欠点を指摘するというものです。モロッコ出身 の若者ガセールは、尊敬する師ベン=ベレイに宛ててスペインの印象を書き送ります。全部で90通からなる手紙のうち、66通がベン=ベレイ宛てにガセールが書き送った手紙です。そしてここにもう一人ヌーニョという人生経験豊かな人物が登場します。唯一キリスト教徒である彼は、ガセールの友人であり助言者でもあります。彼は辛辣な批判をも交えながら、ガセールがスペインの本質を理解する手助けします。
 愛国主義者ともいえるカダルソの狙いは、18世紀のスペインの現状を過去に遡って検証し、祖国を蝕む諸問題を白日の下にさらすことでした。そのため、彼が敬意を表するカトリック両壬とは対照的に、諸外国で多くの同胞の才能と生命を奪い、絶え間ない戦争によってスペイン帝国の財産を食い潰してきた、特に16世紀後半から17世紀末に至るハプスブルク・ スペインの失策が非難の対象となっています。むろんその時代に商業や産業を軽蔑した高慢な貴族たちの無為徒食、貴族の世襲制、外国からの輸入物のみ に頼る贅沢噌好、人々の軽率な行動や怠惰、道徳の乱れなどに対しても、軽蔑の眼差しを向けています。他のヨーロッパに比べてスペインは科学や文化の面で遅れが目立つことから、野蛮人呼ばわりされないためにも、祖国の益となるような外国の新しい考えを導入し、かつ労働と美徳の実践および科学の振興をはかることが重要であると主張しています。いわゆる啓蒙主義の基本的概念である、私利私欲を捨てて社会の発展に貢献すべきである、との著者の熱い思いが綴られています。

「鬱夜」

これは比較的短い作品で、会話体の構成となっています。初版と思われるものが幾つかあります(1789-1790 ,-コレオ・デ・マドリード」紙に掲載、1792、1798)一一手稿本として1775年版があるーーが、どれも3部構成からなっており、3部がわずか数頁で途絶しています。のちの1815年版の3部は完結しているが、これは偽作である可能性が高いようです。また4部が1822年に刊行されていますが、明らかに贋作です。
 この作品には出だしから暗い影がつきまとっています、「なんて夜だ! 夜陰、ぞっとするような静寂、それを遮るように近くの監獄から聞こえてくる嘆き声が、俺の心を悲しみで満たす」。主人公テディアートの精神状態に焦点 が当てられていることもあり、全体の流れにさほど動きが感じられず、ゆったりとした調子で話が展開してゆきます。テディアートは死んだ恋人を墓から掘り出し、家に持ち帰って自分の遺骸と一緒に焼こうと考え、墓堀人ロレンソ に協力を求めるという非理性的な行動に出ます。1部と3部では主人公と墓掘人の2人だけで心の闇の部分が議論されます。このことから変化に乏しく単調な筋運びとなっています。夜の墓場の風景が背景だけに、もの悲しく不気味な印象を与えます。のちのロマン主義をも予感させますが、3部が完結していないため恋人の亡骸を墓から掘り出すのか、自害するのか、あるいはどのような 終局を迎えるのか分かりません。人間の本質、理性と非理性、運命、愛、正義が作品の核と言えましょうか。

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