2014年10月2日木曜日

高級住宅に住みつく不法占拠者―政治的理由も(The Wall Street Journal より) La crisis の一場面

スペインでの La crisis の物語です。



以下のような記事が The Wall Street Journal にありました。非常に考えさせられる記事です。



【バルセロナ】クラウディオ・カッターネオさん(40、次の foto)は2002年にスペインに来て以来、不法占拠した住宅に暮らしている。



  エコロジー経済学の教授でイタリア人のカッターネオさんが最初に不法占拠したのは、バルセロナ郊外にある市所有の誰も住んでいない住宅だった。他の20人 ほどの不法占拠者の仲間入りしたのだ。以来、そうした住宅を渡り歩きながら過ごし、現在は寝室6部屋の、プールが2つある豪勢な邸宅で暮らしている。
  イタリアやスコットランドの大学で教えながら、第2の拠点ともいえるバルセロナに戻ってくると不法占拠を繰り返している。それには政治的な理由がある。 カッターネオさんは、市が所有する歴史的な建築物をデベロッパーが使う解体用の鉄球から守りたいと考えているほか、銀行に差し押さえられている物件に人が 住むことで劣化を防ぐのが目的だと話す。
 こうした不法占拠の運動には「倫理規定」があるとカッターネオさんは言う。それは、空き家に限って占拠するというものだ。
 ここ数年で、カッターネオさんの2歳の息子を含む7人の子供がこうした住宅で生まれた。住人たちは毎月1人当たり45ユーロ程度(約6200円)を出し合い、建物のメンテナンスと食料品の購入に充てている。
 カッターネオさんは「私たちは自主的に計画した緊縮財政の中で暮らしている」と話す。庭の手入れや交流センターの運営などは分担して行い、「意思決定は総意に基づいて」行うという。
  スペインでは不法占拠は犯罪だ。だが、不法占拠者や不動産投資家、銀行員などの話によると、少なくとも数千人が不法に住宅を占拠しているという。全国規模 の公式統計はない。バルセロナはこうした不法占拠者「オクパス」が最も多い街だ。オクパスと呼ばれる人たちには、アナーキストや自宅からの立ち退きを命じ られて放置住宅に移り住んだ人など、さまざまな不法占拠者がいる。
 不法占拠者は世界最大のプライベートエクイティ会社ブラックストーン・グループが直面する問題の一つだ。同社は7月に購入した4万戸分の住宅ローンから収益を得ようとしているためだ。これらの住宅ローンは国有化されたカタルーニャ銀行が扱っていたものだ。
 カッターネオさんは、ブラックストーンの参入を「絶好の機会」だとみている。ブラックストーンが所有する空き家を占拠することは、不法占拠者にとって「投機的な取引との闘いをさらに正当化するもの」だからだ。
 カッターネオさんによると、市が所有する住宅を不法占拠する人々は近隣住民と交流があり、なかにはこうした住宅の庭で作物を育てている住民もいるという。毎週木曜は若い近隣住民が庭で作業をし、不法占拠者と一緒に夕食をとる。
 カッターネオさんが5月から不法占拠している寝室6部屋の住宅には他にもアルゼンチン人3人と、米国人と英国人が1人ずつ住んでいる。高いヤシの木に囲まれた、バルセロナ郊外のこの住宅は、周りに広がる山並みを望む高級住宅地にある。
 高級住宅の中には、不法占拠者が住む前に銅製のパイプや風呂場の蛇口がもぎ取られている例もある。不法占拠者が住むことで、「貴金属をあさる人たちの好き勝手(にはさせない)」一助になっているとカッターネオさんは指摘する。
 カッターネオさんが暮らす住宅のひと部屋にはシャツやズボン、セーターが積まれてあった。「住人が残していったか、寄付されたものだ。不法占拠者のどの住宅にもある」と言う。筆者(ジャネット・ニューマン記者)も好きなものを持っていっていいと言われた。