2013年8月26日月曜日

キング牧師演説50年:差別への異議多様化 権利擁護訴え (毎日新聞)


 ◇リンカーン記念堂前の広場に数万人
 黒人の公民権運動指導者、故マーチン・ルーサー・キング牧師が「私 には夢がある」の演説をしたワシントン大行進から50年を記念して24日に行われた行事では、時代の流れを反映し、黒人だけではなく、同性愛者やヒスパ ニック(中南米系)などの権利擁護を求める演説が相次いだ。会場となったリンカーン記念堂前の広場を数万人が埋め尽くした。
 前回は黒人に対する差別撤廃が最大のテーマ。この日演壇に立った牧師の長男、マーチン・ルーサー・キング3世は人種、性、宗教の違いを乗り越え「いつの日か、我々は自由になる」と希望を語った。
 25万人が参加した50年前のワシントン大行進は、黒人への迫害が激しい時代。連邦政府は行進に伴う暴動を警戒し、首都周辺に軍隊を配置する厳戒態勢を取った。
 今回はそうした緊張感はない。牧師やオバマ大統領の写真が入ったTシャツを売る露店もあり、むしろ、くつろいだ雰囲気が漂う。
 南部ジョージア州からやってきた黒人男性のビル・ロードさん(83)は50年前、活動家として黒人の雇 用改善に取り組んでいた。この場で聞いた牧師の演説に鼓舞され、男泣きした。その分、オバマ大統領のリーダーシップには物足りなさを感じている。「彼は黒 人の大統領だろ。2期目で選挙の心配をする必要はないのだから、人種問題にもっと強い態度で臨んでほしい」
 南部バージニア州の非営利組織(NPO)で働くレジス・サックストンさん(31)は、プラカードを掲げていた。表には黒人の投票権の保護、裏には人種差別が残る刑事司法制度の改革を求める文字。「黒人の若者として公民権運動を続ける義務感」があるという。
 公民権や格差の新たな問題を提示していたのが、白人の若者だ。
 芝生の上でくつろいでいたワシントン在住の大学生、アレックス・アボットさん(23)は「ゲイの友達がたくさんいる」。全米では同性婚合法化に向けた動きが活発化しているが、「ゲイはまだ偏見を持たれている。それを止めなければならない」という。
 東部ニュージャージー州の美容師、ジャクリーン・ガニエさん(24)は「人種を超えて、貧富の差が広がっている」と指摘した。
 演説終了後、人々が1キロほど離れたワシントン記念塔に向かって行進を開始。その中にいた ダイアナ・メランデスさん(27)はメキシコ移民の女性で、今はニュージャージー州のソーシャルワーカーだ。不法移民に市民権獲得の道を開く移民法改正が 議会で進まないことが「人種差別」だという。
 米国で増加する一方のヒスパニックは今や人口比で約17%を占め、黒人の約14%を上回る「最大のマイ ノリティー(少数派)」だ。「白人はマジョリティー(多数派)でなくなることを恐れている。白人があらゆる分野で優位性を保とうとするのが、米国の建国以 来の歴史」。メランデスさんはこう分析してみせた。
 ◇黒人貧困率、白人の3倍
 キング牧師が演説した当時に比べ、米国政府は公民権法をはじめ、さまざまな法的整備をし、黒人の置かれた環境は一定程度改善した。ただ経済面を中心に格差は大きく横たわったままで、人種の平等は道半ばというのが実態だ。
 公民権運動はジョンソン大統領の下で公民権法として1964年に実を結び、あらゆる公共施設における差 別が違法となった。また、差別で不利益を受けてきた黒人などに雇用や大学入学の際に一定数以上の枠を設ける「アファーマティブ・アクション(積極的差別是 正措置)」も広がった。
 調査機関ピュー・リサーチ・センターが22日に発表した調査結果によると、高校卒業率は62年に白人49%、黒人23%だったのが、2012年には白人92%、黒人86%へと差が縮まった。
 ただ、平均家計所得では、黒人世帯が白人世帯の6割弱にとどまったままで、貧困率も黒人が白人の約3倍。住宅保有率も12年で白人が73%なのに対し、黒人は44%と大きく下回っている。


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