2012年11月7日水曜日

映画 El cochecito (1960) 笑いと哀しみ cine español


今から52年前の11 月に封切られたスペイン映画 El cochecito (1960) は 皮肉に富んだ 楽しい スペイン映画です。笑いとともに哀しくて涙が止まりません。

El cochecito es una película española dirigida por Marco Ferreri y estrenada el 3 de noviembre de 1960, basado en el relato Paralítico, de la obra Pobre, paralítico y muerto de Rafael Azcona.
La película obtuvo el Premio de la crítica en el Festival de Cine de Venecia.
Don Anselmo Proharán (José Isbert) es un anciano totalmente decidido a adquirir un cochecito de inválido con motor (今のように電動モーターではなくガソリン・エンジンです), igual que el que tiene su amigo paralítico Lucas y otros compañeros de su edad. Pese a la oposición de toda su familia, Don Anselmo no desiste de su capricho (¿deseo) , incluso si para conseguirlo se ve obligado a vender las joyas de la familia. Cuando su hijo Carlos (Pedro Porcel) se entera, le obliga a devolverlo. En venganza, Don Anselmo toma la decisión de envenenar a su familia. Cuando intenta huir en su cochecito, sin embargo, es finalmente detenido por la Guardia Civil.




Don 年老いた Anselmo は、花束を抱え、ハアハア言いながら歩いていました。(*途中で子牛が出て来るところが何ともおかしくて堪りません。) 同じく友人の Lucasと連れ立って(¿亡き妻たちの?) 墓参りに出かけようというのです。老体には町の雑踏を歩くのは堪えます。Lucasの家 (*ここでも牛を何頭も飼っているようです) に着く頃にはAnselmo はすっかり息も絶え絶えでした。

下の video は音声スペイン語、字幕英語の completa 全編です。


足の不自由な Lucasは先ごろ cochecito 原動機付き車椅子(もちろん今のように電動機式ではなくまだガソリン・エンジンの時代です) を購入し、今日はその cochecito に乗って初めての遠出、墓参りです。
Anselmo がタクシーに乗り、そのすぐ後ろを Lucas が原動機付き車椅子を巧みに操って付いて行きました。


二人の老人はやがて cochecito 原動機付き車椅子仲間 (もちろん老人や身体障害者などです) と共に集団であちこちへ出かけるようになりました。そういうとき LucasはAnselmo を原動機付き車椅子の後部に立たせ乗せてくれました。友達 とそうやって過ごす日々は、普段家の中で疎外されがちだった老Anselmo にはこの上ない幸福でした。しかし、原動機付き車椅子を持っていない Anselmo が 独り取り残される日がしだいに多くなっていきました。


Anselmo は自分も何とか原動機付き車椅子を買おうと手を尽くしますが、家族の猛反対もあって事はうまく運びません。
家族は年寄の気まぐれに過ぎないと軽く思っているようですが、Anselmo は真剣なのです。
Don Anselmo は貴金属を売り払ってまで原動機付き車椅子を購入します。激怒した家族が原動機付き車椅子を返品してしまったため、Don Anselmo はもはや強硬手段に出ます。
しかし最後は 道で 警察 (正確には la Guarda Civil) に見付かり 連行されて帰って行く場面で映画は終了します。


cochecito とは「玩具の自動車」、「ベビーカー」の意味もありますが、この映画がきっかけで「車椅子」の意味でも広く使われるようになったようです。
cochecito が「玩具の自動車」、「ベビーカー」という意味を持つことを知っていれば この映画を更に深く味わえるはずです。

「車椅子」は silla de ruedas と言い、「車椅子で行く」は ir en silla de ruedas です。

主人公 Don Anselmo を演ずる José Isbert は凄い嗄れ声なのですが、これが不思議に聴き取り易いスペイン語なのです。一流の役者の凄いところだと思いました。普通の爺さんの嗄れ声だったら本当に聴き取り難いはずなのに、そこをそのまま聴き取り難く演じていては映画にならないから当然のことでしょうが、とにかく、聞き取り辛く思わせて聴き取り易い声に Ernesto Mr. T は心底感動したのであります。

*牛が何度か出て来て この映画の楽しさを増していますが、その点についてはまた改めて語ることにしましょう。

因みに、cochecito という単語を使って「歩いて行く」を表わすこともできます。coger el cochecito de San Fernando という決まり文句があるのです。
Ernesto Mr. T には Madrid や Soria などに何人か Fernando という amigos がいますが、どの Fernando も よほど遠くへ行く以外はだいたい Coge el cochecito de San Fernando. です。

なお、この映画 El cochecito が封切りされたのは 1960年の11月3日です。今日はもう11月7日ですね。52年と4日前に封切りされた映画の話でした。

P.D. 上掲の video でも御分かり頂けますが、英語ではこの映画の題名は"The Little Coach"となかなか皮肉の利いた楽しい訳になっています。日本語ではどう訳したら良いでしょうか。

ご意見、ご質問等ございましたら、<ernestotaju@yahoo.co.jp へ。