村上春樹の『職業としての小説家』 pp. 197-198 に、
十九世紀の英国の作家で、数多くの長編小説を発表し、当時とても人気があった人です。彼はロンドンの郵便局に勤務しながらあくまで趣味として小説を書いていたのですが、やがて作家として成功を収め、一世を風靡する流行作家となりました。しかしそれでも彼ば郵便局の仕事を最後まで辞めませんでした。毎日仕事前に早起きして机に向かい、自分で定めた量の原稿をせっせと書き続けました。そのあと郵便局に出勤しました。トロロープは有能な役人であったらしく、管理職としてかなり高いポジションまで出世しました。ロンドンの街頭のあちこちに赤い郵便ポストが設置されたのは、彼の業績であるとされています(それまではポストなんでものは存在しなかったんですね)。郵便局の仕事がことのほか気に入っていて、執筆活動がどんなに忙しくなろうと、勤めをやめて専業作家になろうなんて思いも寄らなかったようです。たぶんちょっと変わった人だったんでしょうね。
彼は一八八二年に六十七歳で亡くなったのですが、遺稿として残されていた自伝が死後刊行され、彼のそのようないかにも非ロマン的な、規則正しい日常生活の様子が初めて世間に公表されました。それまではトロロープがどういう人なのか、人々はよく知らなかったのですが、実情が明らかになって、評論家も読者もただがく然とし、あるいは落胆失望し、それを境に英国における作家トロロープの人気や評価はすっかり地に落ちたということです。僕なんかそういう話を聞くと、「すごいなあ、ほんとに偉い人だな」と素直に感心し、トロロープさんを尊敬しちゃうわけですが(本を読んだことはまだないんですが)、当時の人々は全然そうではなかった。「なんだよ、おれたちはこんなつまらないやつの書いた小説を読まされていたのか」と真剣に腹を立てたみたいです。あるいは十九世紀英国の普通の人々は作家に対して---あるいは作家の生き方に対して---反俗的な理想像を求めていたのかもしれません。僕もこんな「普通の生活」を送っていると、ひょっとしてトロロープさんと同じような目にあわされるんじゃないかと思うと、思わずびくびくしてしまいます。まあ、トロロープさんは二十世紀に入ってから再評価を受けましたから、それは良かったといえば良かっ たわけですが……。
とあります。
(Londres, 24 de abril de 1815-Londres, 6 de diciembre de 1882) Escritor británico. Fue funcionario de correos y, en 1868, candidato por los liberales a un escaño parlamentario. Debe su celebridad a una serie de novelas sobre la vida de provincias, «la serie de Barsethshire», entre las que sobresalen Las torres de Barchester (1857) y La última crónica de Barset (1867). Su obra posee gran interés como documento de costumbres de la época; se caracteriza por su humor y su benevolencia en la crítica social y política. Es autor asimismo de una Autobiografía (1883).
Los primeros buzones se crearon en St Helier, en Jersey, en 1852, por recomendación del novelista Anthony Trollope, que era un empleado de la Oficina General de Correos en aquel momento.
Anthony Trollopeアンソニー・トロロープアントニー・トロロープAnthony Trollope
Anthony Trollope nació. (1815) 赤い郵便ポストの提案者
村上春樹職業としての小説家 (新潮文庫)Las torres de Barchester
ところで、今秋 スペインの郵便局で酷い目に遭いました。その話はまた別の機会にします。