東大調査団が初めてペルーに旅立ってから60年。古代アンデス文明の形成過程解明への情熱、そして現地の人々との協力関係は、輝かしい成果をもたらしてきました。最前線を切り開く研究者たちは今、どのようなテーマに挑んでいるのでしょうか?
ペルー北部山地、標高2300mの山上に今から3000年ほど前の大石造神殿の遺跡クントゥル・ワシ Kuntur Wasi があります。アンデスに覇を唱えたインカ帝国の言葉では「コンドルの館」という意味です。ここでは1988年から2003年までの間、大規模な発掘調査と修復保存の作業が行われました。中心となって従事したのは編者・大貫良夫(現在、東大名誉教授)が率いる日本の若手研究者たちでした。調査終了から10年余りを経た今日、クントゥル・ワシでの経験と知見を踏まえた若い研究者たちは、独自の研究を深め、ペルーの各地で発掘を重ね、新発見を通して古代アンデス文明研究の最前線を切り開いています。その成果は いまや世界最高の地位に達していると言えます。その研究の成果、アンデス考古学ひいては人類史研究への貢献を、編者をはじめ8名の研究者たちに語ってもらいます。聞き手は読売新聞文化部記者の清岡央です。
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