普通では考えられないような初歩的な間違いをしてしまうこともあります。
(以下、太字赤部分は 私 Ernesto Mr. T によるものであります。)
最近(と言っても4箇月ほど前)出た、青山南『60歳からの外国語修行――メキシコに学ぶ (岩波新書)』は、pp.154-155で、
...「コモ・セ・ディセ ××× エン・エスパニョル?」
「××× はスペイン語でなんと言いますか」...
...「¿Cómo se dice ××× en español?」である。...「se dice」は「desirse(デシールセ)」...
また、後付けの「本書に登場するスペイン語表現」p. 5でも
desirse[デシールセ]〜と言われる
と連続して同じ綴り間違いをしています。
p. 236 の「おわりに」で青山氏は、
なお、 随所でスペイン語についての生かじりの知識を臆面もなく披露しているが、あまりにもトンチンカンなことを書いていたらさすがにまずい、と思い、ラテンアメリカ文学を専門にされている久野量一さんに点検していただいた。「本の魅力は生かじりの部分にあるかと思います」という励ましはうれしかった。だから、というか、でも、というか、なにか変なことが 書いであったら、それはぼくの生かじりの所産で、ぼくの責任である。
と述べておられますが、Ernesto Mr. T にとりましては、decirse を desirse と綴るような誤りは見たことがなかっただけに新鮮でした。また「魅力」とも思えました。
これは第2刷(¿第2版?)で decirse に訂正される(¿既にされた?)のかもしれませんが、出来れば 新鮮な魅力を保つためにずっと desirse のままであってほしいとも思います。
Ernesto Mr. T が学んだ España では c は 主に θ (英語の th に近い音) で発音されますが、中南米では大体 s の音で発音されるそうです。ですから、このような楽しい魅力的で新鮮な「うっかり」が出たのだと Ernesto Mr. Tは 科学的に(¿音声学的に?)分析した次第です。「トンチンカンなこと」ではなく輝きだと思えました。
同書 pp. 184-185 に トリオ・ロス・パンチョスの歌「シェリト・リンド Cielito lindo」の中の「Ay, Ay, Ay, canta y no llores (アイ、アイ、アイ、歌え、泣くな)」」(発音は「アイ、アイ、アイ、カンタ・イ・ノ・ジョレス」)をずっと「アイ、アイ、アイ、南海の情熱」と思い込んでいたというエピソードがあります。
でも、発音は「カンタ・イ・ノ・ジョレス」である。「ナンカイ・ノ・ジョネツ」と聞き取 ってしまってもしかたないだろう、とぼくは小学生だった自分を許してやりたい。
と仰っていますが、こういった大らかさこそ 青山氏の魅力であり、私たち読者が引き込まれる所以なのではないでしょうか。
Ernesto Mr. T は、青山氏のスペイン語修業の続編を早く読みたい、と心待ちにしています。
Ernesto Mr. T は 何も出来ない ただのトンチンカン+無能で 青山氏のような名文家且つ名翻訳家に憧れのような気持ちを抱いている 貧しき 60歳代 であります。
pd. 因みに、似たような題名ですが、こちらはスペイン語の専門家・教授によって著された「60歳からのスペイン語入門」(寿里 順平・三修社)があります。この本も名著だと思います。
青山南