2013年4月9日火曜日

長南実 生まれる (1920年) Platero y yo, El Cid, 他

長南 実(1920 [大正9]49- 2007年)は、山形県出身のスペイン文学者、東京外国語大学名誉教授でした。 東京外国語学校(現・東京外国語大学)で会田由に師事し、卒業後、天理大学助教授を経て東京外国語大学教授(定年後に清泉女子大教授)となり、スペイン語。スペイン文学を教える傍ら、多くの素晴らしい翻訳を行っています。

翻訳の質・丁寧さには評判があり、例えば、ラス・カサスの『インディアス史』(岩波書店、1981-1992)の全訳には十数年の歳月を費やしました。


「インディアスの発見・征服史と自然・文化誌の両面を幅広くカバーしているだけでなく、激越な感情をあらわにして、執拗なまでに論難を繰り返しているこの特異な歴史書を、一個の文学作品としてその文体を尊重しながら、一言一句もゆるがせにしないで全訳を試みるということは、おのれの非力を顧みない無謀のきわみであった。」と後に記していますが、文学作品的美しさの仕上がりとなっています。
『エル・シードの歌』(岩波文庫、1998)には120ページ余の註を施されていますが、その註の御陰で Ernesto Mr. T は このスペイン最古の武勲詩を2倍にも味わうことが出来ました。長南実は東京外大退職後に、何年かにわたって社会人向けのクラスで この作品を講読したとのことで、読者の立場に立った配慮というものが感じられます。
Ernesto Mr. T にとり、長南実の翻訳の中で何よりも味わい深いのは ファン・ラモン・ヒメネスの Platero y yo の翻訳です。岩波少年文庫『プラテーロとぼく』(下の foto、今は絶版となっていますが、下記の買い物欄にあるように古書としては購入可能です。) です。

この翻訳を読み終わるとすぐ、名古屋・栄の丸善へ行き、スペイン語の原書を購入し、原文で読み始めました。もう30数年も前のことです。

Platero es pequeño, peludo, suave, tan blando por fuera, que se diría todo de algodón, que no lleva huesos. Solo los espejos azabache de sus ojos son duros cual dos escarabajos de cristal negro.

プラテーロは小さくて、むくむく毛が生え、ふんわりしている。見たところあまりやわらかいので、からだ全体が綿でできている、骨なんかない、とさえ言えそうだ。真黒の瞳のきらめきだけが、まるで二匹の黒水晶のかぶと虫みたいにこちこちしている。



この出だしだけでも、下の『プラテーロとわたし』の訳とは全く異なります。子供用と大人用に訳し分けたのかもしれませんが、長南実は そういう細かいこともできる人でした。


Juan Ramón Jiménez falleció フワン・ラモン・ヒメネス歿 (1958年) プラテーロ


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