今日は Azorín アソリン こと José Augusto Trinidad Martínez Ruiz の誕生日であります。
Azorín、アソリン (本名:José Augusto Trinidad Martínez Ruiz、1873年6月8日 - 1967年3月2日)
Azorín については3月2日の命日にも少し書きました。
「アソリン」の本名は、上記のように、ホセ・アウグスト・トリニダード・マルテイネス・ルイスと言います。1873年の今日、6月8日にモノバル(アリカンテ)で9人兄弟の長男として生まれました。父親は弁護士で、家庭は裕福であったそうです。8歳のときイェクラにあったエスコピオ修道会が経営する学校に入り、当初は厳しい校則に悩まされながらも、8年間の寄宿生活を送りました。このときの経験は「小さな哲学者の告白」(1904)に記されています。
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1888年、バレンシア大学の予科に入りますが、法 律の勉強はそっちのけで、文学や演劇などに興味を持ち、カフェに入り浸る日々を送りました。彼の反骨精神はこうした生活のなかで培われたのです。だが、大学を卒業することなく、96年にはマドリードに出て、「エル・パイス」紙などに記事を寄稿しながら糊口をしのぎました。このときの苦しい生活については「マドリード」(1941)のなかで語られています。ちょうどこの時期、同世代の著名人たちと知己を得、1900年にはパローハとマエストゥの3人でのちの「98年世代」の萌芽ともなるLos Tres「三人組」を結成。パローハとは強烈な印象を受けることになるトレドへ一緒に旅をしています。「アソリン」というペンネームが定着するようになるのは1904年以降です。彼はスペインの村々を駆け巡り、その度に感動を新たにしました。8年にフリア・ギンダ・ウルサンキと結婚しますが、子宝には恵まれませんでした。1924年には王立アカデミーの会員となました。1936年にスペイン内乱が勃発すると、夫婦は戦火を避けてパリへ移り、1939年に内乱が終結すると祖国に戻りましたが、次第に筆の勢いは衰え、1953年以降は文筆活動から身を引き、ひっそりと余生を送りました。1967年3月2日没。享年93歳と、長生きでした。
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Azorín の作品は小説、演劇、批評、随筆と多岐にわたり、全体的に簡潔で持情的な文章が特徴です。感受性豊かなアソリンは、些細な物事の中にも思いがけない意味合いを嗅ぎ当てる名人でありました。スペインや外国を旅しながら、彼はカスティーリャの風景を魅力的に、かつ生き生きと描きました。また時聞が長いあいだ止まったような村々をやさしい眼差しで見つめながら、その光景を見事に描き出し、こうした光景や日常の物事の中に時の流れと無常を感じとったのでした。
独自の新たな解釈によって古典を更生らせた作品には、古典作家及び作中人物をアソリンの生きた時代に呼びもどし独自の解釈を与えた、『スペイン文学案内』(1912年)、『古典作家と現代作家』(1913年)、『古典の周辺』(1915年)、『リバスとラーラd』(1916年)があります。一方、自国の風景を描写した作品には、『カスティーリャ』(1912年)、『村々』(1905年)、『ドン・キホーテの通った道』(1905)、『スペイン人の見たスペインの風景』(1917年)があり、これらの作品では、叙情的な気分に浸りながら荒涼たるカスティーリャに点在する村々を、まるで何百年ものあいだ時聞が止まったまま存在するかのように、感動的に描いています。
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また、『意志』(1902年)、『ドン・ファン』(1922年)、『ドニャ・イネス』(1925年)などの小説も発表していますが、いずれも物語の筋立てや目立った事件は二の次で、描写の対象が風景や人物やその場の雰囲気という、むしろ自叙伝風の小説となっています。アソリンの場合には、写実主義小説にみられるような日常生活を採り入れるにしても、結果的には持情的要素を伴った個人的な印象や思い出がそれにとって代わることになるのです。
劇作品には、『オールド・スペイン』(1926年上演)、『ブランディ、もっとブランディ』 (1927年上演)、三部作『見えざるもの』(『鏡のなかの蜘妹』、『死の刈り取り人』、『ドクター・死、診察時間は3時から5時まで』1928年上演)などがあります。Azorín の演劇は現実的なストーリーとは違い、ルイジ・ピランデッロ(1867-1936)などの外国演劇に目を向けながら、作劇方法の改革の必要性を求めたものが多いのです。いわば、超現実的な方向を目指し、人間の外面的な言動ではなく、内面的な世界---意識の世界と無意識の世界---を舞台に掛けることを目指したのです。文体からすると、生き生きとした対話を重視し、その他の要素は全てこれに付随するものと考えました。
内戦後マドリードに戻ったアソリンは、伝統的なスペインに関するエッセイを書き続ける一方で、非現実的小説空間を提示する『気まぐれ』(1943年)や『夜明けの無い島』(1944年)なども書いています。
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