2012年7月20日金曜日

(旧) 三笠書房とヘミングウェイ全集

昨日 A. J. Cronin の話をしましたが、その(邦訳)全集を出版していたのが、三笠書房という出版社です。今では「知的生きかた文庫」などの自己啓発本のようなももの出版社というイメージを持たれる方が多いと思いますが、以前は 外国文学の邦訳の一大出版社でした。Ernesto Mr. T が青春時代に傾倒した Ernest Hemingway の(邦訳)全集の出版元でもあったのです。

1968年に2度目の倒産となり、当時一般社員だった押鐘冨士雄が、創業者の竹内 道之助から会社経営全般に関する裁量権を得、以来、今まで主力だった翻訳文学から手を引き、今のような 自己啓発本 の出版社に変わっていってしまったのです。

そういった経営体制の変更のことを知らなかった Ernesto Mr. T は、つい最近まで いつになったら 三笠書房から 新しい訳や ヘミングウェイの遺稿などを再編集した より素晴らしい「ヘミングウェイ全集」が出るのだろうかとずっと待ち続けていたのでした。



以下 (旧) 三笠書房について。

1933年に翻訳者の竹内道之助により海外文学の翻訳出版社として創業されました。
処女出版は『ドストイエフスキイ研究』(アンドレ・ジッド他著)です。
『ドストイェフスキー全集』、『ヘルマン・ヘッセ全集』、『ヘミングウェイ全集』などの全集を何種類も発行しました。
上記のような全集の他三笠文庫(1951年創刊)、『三笠版現代世界文学全集』(全27巻、別巻4。1953年-1957年)などのような素晴らしい書物を発行し続けることができたのは何よりも『風と共に去りぬ』の販売利益によるものです。
マーガレット・ミッチェルの時代長編小説 Gone with the Wind の邦訳『風と共に去りぬ』(大久保康雄訳・初刊は1938年)は、1949年、1950年の年間ベストセラー第3位にランクされるなど、300万部を超える大ベストセラーとなったのです。
また、更に、1952年にはL・M・モンゴメリの Anne of Green Gables の邦訳 (村岡花子訳)『赤毛のアン』がベストセラーとなったのです。
しかし、それも長くは続かず上記のように1968年の2度目の倒産によって 翻訳文学の第一線から退くこととなってしまったのでした。
五来達訳で最初のマルセル・プルースト『失われた時を求めて』を刊行したのも この(旧) 三笠書房でした。
話は尽きませんが、冗長になりますので、今日はここまでにします。

ご意見、ご質問等ございましたら、 <ernestotaju@yahoo.co.jp>  へ。

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